研究書・論文 
“ヨーロッパ”とは何か? “ヨーロッパ”とは何か?
第二次大戦直後の連続講義から

リュシアン・フェーヴル著/長谷川輝夫訳
  緒言 マルク・フェロ(『アナール』共同主幹)
  序文 ブリジット・マゾン


定価: 本体5700円+税
2008年2月刊
ISBN978−4-88708-364−6
A5箱 466頁

在庫あり
アナール派創始者フェーヴルの、幻の講義ノートついに復元!
第二次大戦末、パリ解放直後からコレージュ・ド・フランスで行われたフェーヴルの連続講義の講義ノートが、マルク・フェロ、ブリジット・マゾンらアナール派現世代の研究者たちの手によって復元、刊行された。テーマは「ヨーロッパ」。古代から現代まで、アジア・アフリカを捉えながら人類史の中のヨーロッパ論を展開する。この連続講義は、アナール派創始者としてのフェーヴルだからこその“壮大なヨーロッパ文明論”であった
【主要目次】
第1課 概論 まずはヨーロッパを定義する
第2課 いかにしてヨーロッパは名付けられたか
第3課 ヨーロッパ、ヘレニズム、地中海
第4課 ヨーロッパ、ローマ帝国と地中海
第5課 帝国が滅びると、ヨーロッパが現れる
第6課 カロリング朝ヨーロッパ:ヨーロッパの予示
第7課
第8課 ヨーロッパ、その萌芽:カロリング帝国
第9課 ヨーロッパとキリスト教世界
第10課 ヨーロッパと封建制
(中略)
第21課 18世紀のヨーロッパ
(略)
第23課 革命:ヨーロッパという幻想は、いかにして国民にぶつかり、沈没するか
(略)
第25課 もうひとつの暗礁、民族
編者註における引用文献一覧
索 引
マルク・フェロ【緒言】から
……このテクストは、ヒッチコック映画のプロットのようにサスペンスに満ちている。ヨーロッパはどのように誕生したのかというリュシアン・フェーヴルがかけた謎に関して、これ以上鋭い考察が1945年以来書かれただろうか。このテクストを読み了えるやいなや、意地悪と思われてもしかたのないそんな疑問が沸いてきた。確かにヨーロッパの歴史に生じた大きな出来事の一覧表を作成しようという試みは過去数十年間に、何人かの冒険家が手掛け、成功した。だが、フェーヴルのテクストはそのようなものではない。変わりやすいがはっきりしたアイデンティティを持つひとつの総体の出現、完結した、あるいは完結していないひとつの歴史的現象の発生を暴こうとする調査なのである。(後略)

ブリジット・マゾン【序文】から
……ここに刊行するテクストは、1944〜45年、コレージュ・ド・フランスで行われたフェーヴルの講義の手書きノートである。
 第二次世界大戦が終結したとき、フェーヴルはコレージュ・ド・フランスの聴講生に対し、何を素描して見せたのだろうか。ギリシア人の抽象的で架空の発明物である「ヨーロッパ」という呼称に始まり、統一性を持った文明という、現実的で活き活きとした、しかし何度も危険にさらされてきた観念に到達する。(略)熟考し、理解するのに必要なものを提供するのだ。〔・・・・〕意外さも問題もない、一種の、外面的で整然とした、ありきたりのヨーロッパの歴史をさらっと書こうとしても無理だ。ヨーロッパはそのような政治形成体ではない。ヨーロッパとは、ひとつの文明なのである。文明ほど流動的なもの、危険にさらされて生きるもの、歴史家に対し自らの殻を破り、視野を広げ、世界をたえず見つめる能力を要求するものは地上にない。(後略)
【書  評】
『歴史学研究』2010年1月 No.862 書評より  (評者:平 正人)

「ヨーロッパとは何か」・・・社会が大きな転換期をむかえるたびに、歴史家はこの問題に立ち返ってきた。・・・略・・・ここに紹介するフランス人歴史家リュシアン・フェーヴルもまた,第二次大戦直後,「ヨーロッパとは何か」という問題に立ち返った歴史家である・・・略・・・本書は,コレージュ・ド・フランスでの連続講義(1944−45年)のためにフェーヴルが準備した手書きノートを復元したものである。彼はなぜ2000年にもおよぶ壮大なヨーロッパの歴史を講義のテーマに選んだのか(あるいは,選ばなければならなかったのか)。・・・略・・・本書の頁を1枚1枚めくるごとにフェーヴルの声が直に伝わってくる。・・・略・・・いま,社会は大きな転換期をむかえようとしている。われわれは再びこの問題に立ち返るときなのかもしれない。本書を通じて,歴史家フェーヴルの熱い思いが人々の心に広く響きわたることを期待したい。「ヨーロッパとは何か」。かくも古くて新しい問題である。
『史学雑誌』第118編第8号「新刊紹介」より  (評者:山本妙子)

マルク・ブロックとともに『社会経済史年報(アナール)』を創刊し,わが国でもアナール派の祖として知られているフェーヴルがコレージュ・ド・フランスで1944‐45年に行った講義の自筆ノートを彼の死後活字化し,刊行したものの邦訳である。本書の講義は,28課にわたりヨーロッパという観念を探求したもので,フェーブルによるヨーロッパの形成過程に関する多数の講義ノートなかでも最も完成度が高く,本人も刊行を意図して加筆し続けていたという。・・・中略・・・本書はヨーロッパ統合の動きに注目が集まる昨今,読者にあらためてヨーロッパとは何かを問い直す機会を与えてくれる。訳者は『歴史のための闘い』(平凡社,1995年)等のフェーヴルの著作の翻訳も手がける長谷川輝夫氏である。本書の最大の特徴は講義ノートならではのフェーヴルの雄弁な語り口と折々に挿入される隠喩である。難解といわれる彼の文章を読みやすい日本語に移した訳者の労に敬意を表したい。また原書編者註,引用文献一覧,付録の関連文書,マルク・フェリの緒言に加え,訳者あとがきと訳註は,初学者や一般の読者にとって本書の理解を深めるのに役立つだろう。広い読者層に向けた邦訳で彼の講義を聴講できることは喜ばしい。
 HOME  会社案内 | 近刊案内 | 書名一覧・索引 | 注文について | リンク集
Copyright (c) 2005 Tosui Shobo, Publishers & Co., Ltd. All Rights Reserved