研究書・論文 
家の存続戦略と婚姻 家の存続戦略と婚姻
日本・アジア・ヨーロッパ


國方敬司・永野由紀子・長谷部 弘編


定価: 本体4500円+税
2009年10月刊
ISBN978−4-88708-383-7
A5 240頁

在庫あり
*家の存続戦略の多面的な問題を、比較家族史学会会員を中心とする13人が、それぞれ独自の観点から分析・紹介する・・・

日本は、時代劇のお家騒動顔負けの近世大名家存続戦略から、現代の東北農村のイエ存続のための婚姻まで。アジアは中国宋代士大夫における「気」の継承を安定させる方策…。ヨーロッパでは、19世紀フランス農家で「民法典相続法」による不動産分割の回避戦略。多彩な時代・地域・分析対象から、家の存続戦略と婚姻を、時にはきわめて具体的に,時にはきわめて理論的に検証した論集
【目  次】
婚姻と家の存続―「はじめに」として―……………………………國方敬司
第一部 日本の家と婚姻戦略
 近世大名における家存続戦略……………………………………岩本由輝
 近世農村における世帯と婚姻……………………………………木下太志
 近世日本における「家」の継承と相続……………………………長谷部弘
 資本家の婚姻と「家」の存続戦略…………………………………米村千代
 イエ存続戦略としての姉家督……………………………………永野由紀子
第二部 アジアにおける家と存続戦略
 宋代士大夫の「興盛之家」防衛策………………………………大澤正昭
 「家」の存続における植民地支配期の影響に関する考察………姜 恩和
 東インドネシアにおける家と婚姻戦略……………………………小池 誠
第三部 ヨーロッパにおける家と存続戦略
 中近世ドイツ地方史からみた相続慣習…………………………村山 聡
 近世英国農民の「家」存続………………………………………高橋基泰
 ケンブリッジ州チペナム教区のソープ家…………………………伊藤栄晃
 一九世紀フランスにおける農家の存続戦略……………………伊丹一浩
【書  評】
図書新聞  No.2950  (2010.1.23)

(前略) 家の存続とは,どういう意味を持つものなのだろうか。・・・略・・・本書では,「『家・イエ』を家制度とは区別して,基本的には,継承すべき家業・家産をもつ永続的な家族集団」(國方敬司「婚姻と家の存続―『はじめに』として―」)としている。・・・略・・・13の論稿で構成している本書だが,私の関心を惹いた幾つかの論稿に触れて,「家の存続」という意味を見通してみたい。岩本由輝「近世大名における家存続戦略」では,出羽久保田藩佐竹氏における藩主継承の問題を精緻に分析している。・・・略・・・長谷部弘「近世日本における『家』の継承と相続」においては,名声という意味の「名」ではなく,文字通りの「家名」ということへの析出を行っている。
・・・略・・・大澤正昭「宋代士大夫の『興盛之家』防衛策」・・・略・・・小池誠「東インドネシアにおける家と婚姻戦略」・・・略・・・このようにして見てみれば,「家の存続」とは共同体的要請からくるものであることが推察しうる。それは,なによりも共同体とは,家々の集合体(家族から親族へと拡大していく過程)の別称でもあるといっていいからなのだ。近現代は,そうした家,共同体を法制度という国家的な統治支配力をもって,婚姻・戸籍というものを強固に管理していった過程であったということができる。本書の論稿は,いわばそうした過程の前段を分析した注目すべき試みだといっていい。
                                             評者:久保 隆
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