刀水歴史全書81
ギリシアの古代 ギリシアの古代
歴史はどのように創られるか?

ロビン・オズボン著/佐藤 昇訳


定価: 本体2800円+税
2011年7月刊
ISBN978-4-88708-396-7
四六判 261頁


在庫あり
古代ギリシアのディスコボロス(円盤投げ選手)は、私たちにも「おなじみ」のスポーツ競技の一場面…でしょうか? 同時代の文脈に置き直してみると、どうやら別の側面が浮かんでくるようです。歴史を学ぶ人は、そうやって歴史を「創って」います。でも同時代の文脈とは言いますが、ヘロドトスやアリストテレスが綴った歴史だって「創られた」ものです。時代の状況によって、過去の描き方は変わってくる可能性があります。私たちは歴史とどう向き合い、どのように歴史を「創って」いくべきなのでしょうか。本書は最新の研究成果を基に、古代ギリシアとギリシア史研究の基礎を刺激的に説く「入門」の書です。
【目  次】
日本語版によせて
はじめに
第1章 馴染み深く、異質なるギリシア
第2章 ポリスを創る
第3章 ギリシアの人口とサヴァイヴァル
第4章 法、僭主、そして政治の創造
第5章 敵対する
第6章 自由と抑圧の都市
第7章 ギリシア都市、斉一性と多様性
第8章 アレクサンドロス―ギリシア史終幕?
読書案内/文献一覧/索 引

【書  評】

『古代文化』 2012年12月 第64巻第3号 「新刊紹介」より

「古代学の基礎 Classical Founndations」の一冊である本書は、佐藤昇氏によって適切に訳出され、導入としての概観と訳注、および読書案内を備えた懇切丁寧な手引きとなった。古代ギリシア史入門として理想的な書物を改めて「紹介」する必要もないが、章ごとの概要が参考となればと思う。(略)ここ(第六章)から最終章までは「アテナイ帝国」の歴史であり、アテナイ史が専門の訳者の概観も伴って、アテナイ通史としても役に立つ。(略)「オズボン先生の講義を受けながら、皆さんご自身でも考えて下さい」という訳者の言葉の通り、講義で直接話を聴いているかのような気分で読書を楽しめる。良質な講義と、優秀なティーチングアシスタントによって、いくつもの思い込みを楽々と乗り越えられるはずだ。著者曰く、「歴史というのは、起こった出来事ではありません。自分自身で作り上げるものなのです」。本書との邂逅によって、この言葉が実現されることを願ってやまない。      評者:山内暁子

『史学雑誌』 (121-2) 2012年2月 「新刊紹介」より


ようやく、と喜びたい。駿才オズボンが円転滑脱の文体で描き出すイギリス古典学の妙味が、佐藤の筆によって明るい日本語に写し取られている。訳文や訳注、章毎の解説は心憎いまでに行き届いている。(略)読者が抱く歴史像や図式を突き崩す。著者の糸は冒頭から鮮明だ。
第一章「馴染み深く、異質なるギリシア」は壺絵を素材に、運動や性愛をめぐる視線が、彼我で如何に異なるか、また近代社会がその差異にどれほど無頓着であるかを突き付ける。(略)方法論に自覚的な語り口とも相俟って、史学概論の参考書に薦めたい一冊である。(以下略)
                                           評者:上野慎也

『読売新聞』2011.8.28 「本よみうり堂」より

上野の西洋美術館で「古代ギリシャ展」が開催されている。人気を集めているのがボスターにも使われた円盤投げ選手(ディスコボロス)の彫像だという。・・・略・・・なぜ裸でスポーツするのか、と問いかけると確たる返答は戻ってこない。著者は陶器絵のさまざまな形象やプラトンやミシェル・フーコーの説などを援用してスポーツ競技が「性愛の舞台」でもあったと指摘する。・・・略・・・異なる多様なデータを並置して同時代的なまなざしを取り戻させ、つぎつぎ定説を覆し、より斬新で柔軟な史眼へと導く絶好の古代史入門書である。              
                                           評者:前田耕作


『エコノミスト』2011年8月2日特大号 Book Review

大英博物館所蔵でおなじみの彫像ディスコボロス(円盤投げ選手)だが,9月25日までなら国立西洋美術館(東京・上野)の「古代ギリシャ展」で見ることができる。この彫像への疑問から出発して,ロビン・オズボン『ギリシアの古代』(刀水書房,2940円)はギリシャ史の諸問題を見通す地図を示す。なぜ彫像の青年は臆面もなく全裸なのか。記録が出しやすいためか,ほどけた着衣が絡むけがの防止のためか,それとも...。(中略) このような文字,遺跡,図像などを手掛かりにして,ギリシャ史に新しい光が当てられる。入門書ではあるが,歴史が創られていく現場に立つ思いにさせてくれる。
                                          評者:本村凌二
【著者プロフィール】
ロビン・オズボン
ケンブリッジ大学古代史教授。
同大学キングス・コレッジのフェロー,シニア・チューター。英国古代史学界の代表的研究者
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